【提言】消防救急と民間救急の連携強化による搬送体制の再構築について

多摩地区における民間救急業界の次なる一手
導入
高齢化が進む多摩地域において、限られた消防救急資源を最大限に活かしつつ、市民一人ひとりに必要な搬送手段を確保するためには、民間救急との適切な連携体制が必要不可欠です。
本記事では、元東京消防庁 救急救命士としての現場経験をもとに、消防と民間の「合理的な役割分担」を実現するための具体的な提言を行います。
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本文
■ 提言の趣旨
消防救急と民間救急の連携強化による「緊急度に応じた搬送体制」の構築を目指します。
現場で傷病者に接触した消防救急隊が、観察カード等をもとに緊急性・重症度が低いと判断した場合、救急隊指導医に助言を要請し、その判断により医療系民間救急事業所へ引き継ぐ運用体制を提案します。
現状のポイント
- 東京都における民間救急の主な紹介案件は 転院搬送または通院、帰宅事案。
- 東京消防庁(救急指導課 救急普及係 木村和己司令)も毎年の協議会で同様の現状を説明
- しかし、令和4年の事故種別別出場件数では、転院搬送は 全体のわずか4.9%(軽傷および中等症事案を引き継ぐことができれば、市場規模が一気に拡大)。
本質的な課題
👉 紹介される案件そのものが非常に限定的であり、市場が広がらない構造的問題が存在する
💡ポイント
✅ 消防との“補完関係”にとどまらず、「市民の暮らしを支える交通インフラ」として再定義することが必要
✅ 「救急」と「介護・看護・日常生活支援」の中間領域でのニーズを掘り起こすべき
✅ 行政紹介以外のルート(医師・ケアマネ・家族)からのダイレクト依頼の仕組み整備が市場拡大のカギ
■ 想定される効果
- 🚑 消防救急の現場滞在時間の短縮
- 🧑🚒 消防行政のマンパワー・資源の最適配分
- 🏥 民間救急が対応可能な事案の拡大(市場拡大)
- 👨👩👧 市民の多様なニーズに応える搬送手段の確保
■ 今後の展望
この体制が確立されれば、まず多摩地区をモデルケースとして展開し、将来的には全国の自治体へと広げていくことが可能です。
消防と民間救急の連携強化は、住民の安心と行政の持続可能性を同時に実現するカギとなります。
まとめ
民間救急事業者は、単なる“代替手段”ではなく、地域医療・福祉のインフラとして重要な役割を担う存在です。
この提言をきっかけに、制度や運用のあり方を今一度見直し、より多くの方が安心して生活できる体制づくりを推進してまいります。
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